「さらば、外堀を埋める日々」森見登美彦著『夜は短し歩けよ乙女』のネタバレ感想です。
夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦
・恋物語
「さらば、外堀を埋める日々」
男主人公と女主人公の2つの視点から語られる恋物語。男主人公視点の話に焦点を当てて見ると、いわゆる「自意識の迷宮」に囚われている主人公が、そこから一歩踏み出す物語と捉えることもできますね。これは森見氏の別の著作『四畳半神話大系』と同じ文脈(※ネタバレ:四畳半神話大系の終章は、自意識迷宮の象徴っぽい四畳半ループ世界から主人公が脱出する話だった)で熱いです。
「こうして出逢ったのも、何かの御縁」
女主人公視点のお話だと、そのまま身近な先輩に恋をする物語と捉えればいいのかな。この女主人公の視点が入っていることによって、本作は自分が以前読んだ森見作品2作(太陽の塔と四畳半神話大系)よりも読みやすかったような印象を受けました。いや、その2作は男一人語りの濃さと滑稽さが面白みの一つになっているので、あれはあれで正しいのですが。
・叫び
「自分の意思を徹底的に分析すればするほど、虚空に静止する矢の如く、我々は足を踏み出せなくなるのではないか。(中略)あらゆるものを呑み込んで、たとえ行く手に待つのが失恋という奈落であっても、闇雲に跳躍すべき瞬間があるのではないか」
個人的に一番感動したのがこの科白。風邪を引いた主人公が夢のなかで熱弁を振るう場面で出てくる科白なのですが、これは上で少し触れた「自意識の迷宮」みたいなものから一歩踏み出さんとする決意の科白なのですよね。何でも当たって砕ければいい、ともかく行動すれば良いというものではないけれど、だからといって外堀を埋めてるだけでも、ずっと自分の中でぐるぐる考え込んでいるだけでも、やっぱりダメだよね、という。
・森見マジック
「吹き荒れる爆風から解き放たれ、気がつくと澄んだ空を滑るようにして飛んでいた」
本作でも、森見氏お得意の日常的なものと非日常的なものが混ざっているような(いわゆるマジックリアリズム的な)文章は健在でした。あらすじだけ見れば平凡なエピソードになりそうな物語を、上手く盛り上げていたと思います。特に第4章の、2人で夜明けの京都を見る場面なんかは、クライマックスに相応しいスケール感が出ていて良かったですねー。この作風だからこそ、上記した「自意識迷宮から脱出しなければ」みたいな割と普遍的でストレートなメッセージも映えるのだと思います。
そんなわけで、普遍的なテーマを内包した恋物語を森見節で仕立て上げた本作「夜は短し歩けよ乙女」、とても楽しめる作品でした。

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
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私はこの本は「半分楽しめて半分よくわかんない」って感じだったかなー。ちょっと「乙女」が唐突過ぎるというか。でも「太陽の塔」よりすんなり読めて安心したのを覚えてるよ。
3章からの恋が動き始める感じがたまりませんなー。
こっちからもTB飛ばすねー。